養老のいずみ

養老のいずみ


奈良に都があった頃のお話です。
美濃の国に一人の若者がおりました。
年老いたおとっつぁと一緒に暮らしておりました。

若者は、来る日も来日も山でたきぎをつくり
それを町へ持って出てお金にかえとったそうな。
せっせと働いとったやけんど、家はその日を暮らすのがやっとこさのことやった。

年とったおとっつぁは体もよわらしとったが酒はよぉとのまっせた。
この若者、おとっつぁのために愚痴もこぼさんときもい生活やのに
毎日酒を買うて(こうて)帰ってきとったんやと。

酒飲んで機嫌のええおとっつぁを見てよろこんどった親思いの若者やったとな。

ある日の事。
いつものように酒を入れるひょうたんを腰にぶら下げて山へ出かけていった若者。
たきぎがたんとできるようなええ林を探して山の奥へ奥へと入っていったそうな。
するとごつごつした岩のがけっぷちにさしかかった。

岩にコケがはえとったで、すべらんよう用心しいしい歩いとったが
足を滑らせて沢へと落ちてしまった。

落ちたところが、うまい具合に落ち葉がたまとって大事にはならんかった。
「やれやれ、良かった」
と、若者が起き上がろうとした時、ふっと、酒の匂いをかいだような気がしたんやと。

あたりを見回しても酒なんてあるはずが無い。
気のせいやと思ってもやっぱり、酒のにおいがぷ〜んとする。

においのするほうへと向かっていくと岩の間から水が噴出して流れとった。
よぉくみるとなんや酒のような色や。もしや・・・。

若者がその水を手ですくってなめてみると、なんとまぁ、これが酒やったんや。
においのよいおいしい酒。

ありがたやと若者は腰にぶらさげとったひょうたんにいっぱいそれを汲んで
おお急ぎでおとっつぁのまっとる家に戻っていった。

「これはうまい酒や。あー、はらわたから体中にしみわたって、元気が出てくるみたいや。」

と、おとっつぁは言ってまた、うまそうに飲んだ。

あくる日から若者は毎日毎日、岩の間から湧き出る酒をひょうたんにくんで帰った。
おかげでからだをよわぁしとったおとっつぁんも何日もせんうちにすっかり元気になったんやと。

若者の親思いの心が天の神さんに通じてこんな不思議なことがおこったんやと村の衆がうわさしたんやと。


その噂がだんだんひろがって奈良の都のみかどのお耳にもはいったんやと。そして、
「そんなめずらしいいずみなら、一度見たいものじゃ。」

といわしゃって、わざわざみやこから美濃の山んなかまでおいでなさったそうな。
そして酒の出る泉を見てすっかり感心して若者に高いくらいとたくさんのほうびをくださったそうな。

若者の父親がこの酒を飲んで元気になったという話を聞いてみかどは、
「いご、この地を【養老】と名づけよう。また、年号も養老とあらためることにしよう」

と、おおせられ国ぢゅうにおふれをださせたんやと。

「養老」というのは、老人を養生する。と言う意味や。

酒の湧き出るいずみは「養老のいずみ」と国ぢゅうに知れわたり、若者の家はずっとあとまでさかえたんやと。

おしまい。



【参考資料】
岐阜県の民話 「ふるさとの民話28」 日本児童文学者協会


しっかりと全部覚えていたわけじゃないので、参考にさせていただきました。
ところどころお国言葉ですが、お分かりでしょうか?

・おとっつぁ ・・・ これはお父さん。
・きもい生活やのに ・・・ こんなくだりがあったとおもいますが、これは「キモイ」今時の言葉じゃなく、苦しい生活、貧乏な生活とお考えください。

あとは、特にないですよね?
普段使ってる言葉だからよく分かりませんね(汗)




『養老の滝』

 霊亀三年(717) 元正天皇が美濃国に行幸されたとき、多度山に美泉が発見された。
この水は、飲めば若さを取り戻す霊泉といはれ、天皇はこれを瑞祥として元号を「養老」と改元された。
養老郡養老町の養老の滝が「養老のいずみ」の伝説。
一種の鉱泉だったらしいのですが、後に酒が湧き出たといふ伝説に変っています。


こんな風にも残っています。

酒が滝のように流れていたらすごいですよね。

養老の滝と「養老のいずみ」のお話。
関係ありますよね?おなじ・・・?

岐阜県民話